上等なお粥/由木名緒美
 
呼吸に追い縋る過密な肺胞の群れ。我先にと急ぐのは浸潤水が震えるミトコンドリアの楽園。ここはエデンの園さ。
「あなた」や「私」という神の肉体。

肉じゃがを作らないと干上がってしまう。何も欲しくない毎日は幸せだけれど少し傷んだバナナが食べたくなる。自傷行為のように幸せを煮詰めていく。焦げつくように悲しくなるわ。こんな幸福に。悲しみがないお粥なんて食傷気味で。

メダカが水槽を飛び出す。鯉のように蛇口の瀑布を昇っていく。昇天。悲しみを幸福のように享受する世界。神様が地獄を創ったのは、天国から逃走する者が多いからだわ。おかえり。一息ついてからまた堕ちなよ。地獄の土産話を聴かせてね。



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