燃える時間/積 緋露雪00
とに違ひなし。
燃える朽ち木は何をも語らずとも
朽ち木が言はんとすることは伝播するなり。
――是非に及ばず。
すると焔が事象の顔貌となりてか、
時間が姿を現すや。
黒黒としたその姿は
漆黒の闇を纏った
焔の芯として屹立してゐる。
時間と時間が鬩ぎ合ってゐるのか、
至る所でバチバチと音を立て
時空を切り裂く。
大粒の雨粒が燃える時間に降り注ぐ度にじゅっと音を立て
焔の勢ひは増すばかりなり。
最早其処には
生きることに意味があるのか、などといった愚問は焼尽し、
あるのは燃える時間のみ。
存在に意味を見出す愚行は最早微塵もなく
燃え上がると言ふ事象のみを曝す朽ち木の
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