稜線/中沢人鳥
あの山の稜線と
想像の痕跡が等しい
山頂付近に着せられた雨量
養分となって
発芽する竜胆は
どれひとつとっても
車内のラジオに届くことはない
それなりの高層ビルに裁断される形
は補完される
あのビルの中で展開される物語と
深緑の続き
その質量が等しい
枯葉を感じる外気
線は指より細く白くなっていく
冷たくなっていく
病院で生じては消えていく
生産関係の中に綴じられていること
それでも
デルフトの眺望に象られた輪郭よりも
美の硬度は高いはずだと信じている
なぞる指に託された
呼吸の仕方を
失くさないように
ポケットに
手をしまう
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