にわくらべ/そらの珊瑚
ゆるゆるとながれている
今もながれつづけている時間を
ふいにとめた とある春の庭がふたつ
となりあっている
ひとつは住人によってよく手入れされていて
赤いチューリップが笑い
黄色のパンジーが風をさそっている
もうひとつは住人を失くしたために
かつて美しく咲いてみせた白いツルバラは消え
草むらがうっそうとしている
枯れてもしぶとく立ち続ける茶色の一群と
いきおいのある若い緑の一群はなかよく同居している
失くすことによって、ちがうなにかを得たように
その家のカーテンは長いあいだ閉じられたまま
ユキもいなくなった
ユキというなまえがぴったりな真っ白な柴犬
初めてフェンス
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