部屋は墓場へ戻す。焚火は近く終わる。/竜門勇気
 

焚火の終わりを待っている
燃えるものがもうなくなってきた
ここにあった暖かな体温
ぼくが愛した柔らかな太陽
そうつぶやいて時間をつぶす
あいまいな未来を想像する

終わりが近づきながら叫んでる
ひと月前まではまだ
それが嘘だって自分をだませるくらい
遠くに聞こえていた
今は眠るときも眠らない時も
眼も見えないぐらいに濃い霧のなか
近くで聞こえるよ

ここにある暖かな毛玉
ぼくが愛する柔らかな日向
札束も、家も、服も、燃えるから
焚火にくべた
暖かさが少しでも長く続くように

何をくべても火は小さくなっていく
かすかな炎の中、札束も、家も、服もそのまま
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