虚空――(この詩は芥川龍之介の『蜘蛛の糸』とは無関係です)/積 緋露雪00
 
み竜巻へと変はりけり。
あっという間に吾独り地獄の宙へと飛ばされて
そのままの勢ひで虚空まで上昇したり。
さうして吾、水の中に落ちにけり。
水面(みなも)に顔を出して息を継ぐと辺りは巨大な蓮の群生地なりを知り。
吾、巨大な蓮の葉の巨大な水滴に落ちたなり。
すると音を立てて蓮の花が一斉に開きしなり。
その荘厳な世界に吾浄土を見るなり。
やがて、その蓮の群生地は大日如来の掌の上と知るなり。
吾、巨大な蓮の葉から下を見下ろすと
不気味に蠢く虚空の天井を見るなり。
虚空からは時折血が吹き上がり
それと共に他の阿鼻叫喚が虚空の天井から湧き起こり
それを大日如来が文字に変化(へんげ)させては呑み込むのでありし。
蠢く虚空。
それはそれは不気味なりをり。
而して吾は浄土の蓮の葉の上を住み処にし永劫に暮らせるなり。

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