虚空――(この詩は芥川龍之介の『蜘蛛の糸』とは無関係です)/積 緋露雪00
 
虚空から一筋の白い糸が垂れ下がり
その糸は金色に輝けり。
虚空をよくよく見ると巨大な大日如来の顔が覗けりては
巨大な大日如来はにこりと笑ひをりて
それで吾は地獄にゐることを解するなり。
初めは気付かなかったが辺りには地獄に堕ちたものどもが犇めきをり。
金色に輝きし白い糸に地獄に堕ちたものどもが
我先にと?まりて
大日如来の元へと引き上げられむことに希望を見出してゐるのか
白い糸の下には巨大な人の塊が醜い争ひをしながら
他(ひと)の頭や顔を足蹴にしては
吾のみ助かればそれでよいといふ人の業を見るなり。
吾はといふとそれを余所に唯、
他の強欲に呆然として足は竦んで動けな
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