蜥蜴の行方の先の素描/ホロウ・シカエルボク
 

瞬きの中に一生を見つけることがある、奇妙に開かれた朝、俺は薄暗い歴史を抱いて合成レザーのソファーの上で小説を読んでいる、壁掛け時計はずっと動いていないように思えるがその存在を忘れている間に数分針を進めている、カーテンの僅かな隙間から忍び込んでくる光が今日の天気はまずまずだということを告げている、本当に何かにのめり込んでいる時、空気は張り詰めたりしない、擬態する虫のように存在は風景の中で境界線を残すのみとなっている、そんな時脳髄から零れ落ちて来るものたちのことを俺は上手く説明することが出来ない、こうしてありのままに書き記すことは出来てもそれが何なのかは理解していない、それを理解することを良しとし
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