窓のある風景/中田満帆
叫びのない窓が額装されるまでに
まずは県民会館で
エッチングとして公表された
田舎者たちにかこまれ、
曝された色彩が
夜ごとかれらのなかで這入って
やがて追放された
叫びのない窓が額装されるまでに
イギリスの小さな個展で
散文藝術に複製されるかたちで
ひとびとのまえにだされた
ひどく脅えたガラスのなかで
膨張するひとびと
夜ごとかれらのなかで破裂して
画廊ごと焼き討ちされた
叫びのない窓が額装されるまでに
多くの時代が過ぎ去っていった
手の届かない納屋のなかで
それが発見されたとき
若い男は窓を額に入れて
叫びのある窓に変えてしまった
夜ごとかれのなかで砕け、
閉鎖病棟の一角でいまは忘れられている。
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