夜に添う/ただのみきや
 
夜はカゲロウの翅
昼の光は油絵の中に塗り込められるよう

闇は真中から暈される
四肢はつながりを断たれ
各々結露しながら息をひそめた

瞳の内側に湧いてくる
けむりの肢体
遠い昔のもの
すぐ傍にあるもの
水面のつま先
瞑る星々

咥えられた指
ふれた蛍がジュっと鳴った
苦く木霊する
あまいめまい

土から匂う
萎縮したからだを破り
ねじれ出るものがたり
舞い踊るものらの影をゆらし
燃え上がる藁ぶきの
火の粉 胸乳にあびて

 幸を盗んだきつねがいると
 見たように語る太夫がいると

ひとつの心臓を
分け合うように

繭つむぎ
機を織る
水底にのみ瞬く星々よ
膨らんでは散り
また 膨らんで

泳ぐ蛇の腹をそっと撫でた
指先から
浮かび上がる
黒髪は
霧を纏って朝を待たず



                 (2024年4月7日)







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