ガラス窓/積 緋露雪00
 
砂地に吾ひとり端座するばかりなり。
するとその砂どもは吾に異形の者を見せるために
液体が氷結するやうに
砂で出来たものをにょきっと立たせて立像を見せるが
しかし、途端にさらさらと崩れ落ちるといふ繰り返しを行ふ。

やがて吾気付きし。
現実は全て邯鄲の夢の如し。
然れども、現実も捨てたものではなし。
それは吾の思ひ通りに行かぬ故に面白いのだ。
艱難辛苦あればこそ、吾生きるに値する。
劇的に世界が変はると
人間を始め生物は絶滅するが、
それもまた、一興なり。

斜めにひしゃげた窓枠に
ぶらんと垂れ下がりしガラス窓。
もう窓枠から解放されしガラス窓は
何処へでもいける筈だが、
いつまで経っても窓枠から離れない。
それは吾の存在の在り方の反映なりや。
吾もまた、吾から一歩も離れずにゐる。

誰が決めたのでもなく、
誰もが自分の居場所にゐ続ける。
偶(たま)には羽目を外して記憶がなくなるまで酔ってはみるが、
記憶がないことにオロオロする吾なり。

斜めにひしゃげた窓枠には
今もガラス窓がぶら下がってゐる。

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