伝言/ヒロセマコト
この町のどこか
古いアパートの
薄暗い部屋の片隅にひとり
力なくうずくまっている
私を見つけたら
無駄な足掻きでもよくやったなと
労ってあげてください
あるいは
都会の真ん中で、大声で
愚かしい会話をしながら
不味い酒を飲み
大人になったつもりでいる
そんな私を見かけたら
目を逸らして
気づかなかったことに
してほしいのです
もしくは
学校や教室に馴染めず
授業中も上の空で
放課後はまっすぐ家に帰り
二段ベッドの上段に寝転び
何度も読んだ本を読み返している
そんな子供を見かけたら
それは私の中のひとりです
そのどれもが
私なのだけれど
それらの延長線上に
今の私があるということを
とても奇妙だなと感じていて
だからもし
これらの私を見かけたら
必ず私に連絡するようにと
伝えてください
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