鏡像 【改訂】/リリー
 
一言「ありがとう」と小声で言ってくれる
 人だった。

 「この間、娘さん来た時の西川さんの顔、あんな顔、私らに見せてくれた
 こと無いよなぁ……」
 「そうそう。私らは、毎日を共に過ごしてても超える事は無い『寮母』な
 んよ。一年に二回も面会に来ない娘さんでも、私らより西川さんにとって
 は……。そういう事やなぁ」
  私も見たのだ、あかい血の宿った西川さんの表情を。この娘さんと西川
 さんの親子関係の経歴までは、分からない。
  四十代半ばぐらいに見える娘さんは、西川さんが亡くなると預かり金七
 十万円を受け取り、葬儀も納骨も全て施設側へ丸投げして涙も見せず老人
 ホー
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