鏡像 【改訂】/リリー
 
り話は振られる。
 「あだっちゃん、夜中の廊下でまだ河瀬さんと逢った事ないんやな。この
 間、田中さんの部屋のドア開いてて、のぞいて声掛けたら河瀬さんがベット
 から降りて帰って行ったわ。」
 「えええ……」
 思わず止まる、お弁当のお箸。

  午後になると月に二度、木曜日は大食堂で喫茶サロンが開かれるのだ。
 八十代で認知症の男性、通称「欽ちゃん」の座るテーブルへ集結する女性
 陣。欽ちゃんには、モテているという認識の全く無い様子。何とも言えな
 い穏ややかで小さな男の子の様なニコニコした照れ笑いが、母性本能を擽
 り人気の的。
  この微笑ましい情景を眺める私に歩み寄
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