閑古鳥の楽譜/そらの珊瑚
 
一日一度静かに燃える家があり
今まさに燃えさかっている
そしてその近くの電線に
数羽の小鳥が舞い降りた
いつぞやのにぎやかさはどこへやら
今日の電線の音符は歯が抜けた様相
それでも音符たちは時折入れ替わりながら
少ないながらも展開を試みているが
小澤征爾さんでもどう演奏しようか頭を悩ませることだろう
世界のどこかでショパンが演奏されている
世界のどこかで銃声がとどろいている
作曲家が全霊を込めて産み出した音楽は
繰り返し奏でられ、これからも奏でられていく
人は人へ命を繋ぎ音楽もまた繋がれ
時間が経っても
言葉が違っても
人の哀しみや喜びのようなものは普遍なのかもしれない

いつのまにか かの家は時間の手で鎮火され
夕闇が最後の一羽を飲み込もうとしている
おまえはねぐらに帰らないのかい
それとも一番星が光るのを待っているのかい
オーケストラの最後のひとつの鐘が
祈りが
長く尾を引いて消えていくまで心を傾ける
そんな閑古鳥の鳴く一日が幕を下ろそうとしている

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