『夢幻空花』 一、 此の世界の中で/積 緋露雪00
 
重力の軛から解き放たれ、仮象の自在を知るのである。それは無重量の中の肉体の有様とは似ても似つかず、例へば自由落下するJumbo(ジャンボ) Jet(ジェット)機の中の無重量室の中では肉体は無重量に慣れるまで自由が利かずにふわふわと浮かんで不自由そのものだが、仮象の自在は将に自在そのもので、其処で仮象される私はちゃんと肉体らしき仮象を保持しながらの自在なのである。それが成り立つのはそもそもが誤謬だからに外ならぬ。
 それでは仮象とはそもそもが誤謬なのであらうか。或ひはさうかもしれぬが、仮象であっても現実の予言的な側面があり、強ち仮象だからと言って、誤謬とは限らないのもまた事実である。こ
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