失くした頁ほど読み返したくなるものだから/ホロウ・シカエルボク
 

時計の文字盤の進行と街の気配が奇妙な歪さをもって網膜に刻まれる午後、全身に浅黄色の布を巻きつけた梅毒持ちの浮浪者女が木の柵で囲われた売地の中でこと切れる、鴉たちは低いビルの立ち並ぶ様々な屋上からそれを見下ろしている、もはや生肉を好む時代でもないだろうと…それが食うには値しないものだということをちゃんと理解している、排気ガスと電磁波が交錯するレクイエム、三本足の犬が真直ぐな道に苛立っている、終わりの無い演目をこなすだけのピエロたち、拙い芸を口先で誤魔化している、言ったもん勝ち程度の世の中、国語辞典がゴミ捨て場で黄色く焼けている、武器を欲しがるのは兵士だけじゃない、戦場に出る覚悟がないから正面にも
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