漁師の家 うつくしい硝子/R
もうその土地は更地にして
地主さんへ返したそうですが
礼文の古い家 元は漁師の 父方の親戚の家には
ものすごく腰の曲がったおばあさんが
何年ものあいだ 一人で住んでおりました
私の母は その家の戸の硝子に惚れこみ
どうにかして戸を譲ってもらえないかと思っておりましたが
島の人たちの前では長年 良い硝子だと褒めるにとどめ
その年も欲しいとは言えないまま
私たちは 実家と呼ばれる老人の家にありがちな
幾人もの想い出から成る分厚い地層や
古びた平成に囲われたラグーンの底などを
ほんの一部ですが 数日をかけて検分いたしまして
ぜんまい式の掛け時計や大小さまざまな石ころ
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