寄り道の先の亡霊/ホロウ・シカエルボク
 
せていたせいかもしれない、あの女にどんな感情も感じられなかったからかもしれない、あの女が咥えていた煙草のせいかもしれない、俺にわかっているのはそんな一連の光景のすべてが、俺を酷く悪い気分にさせたってことだけなんだ…じゃあ、なんでもう一度この話をしたのかバラそうか、このホテルも去年くらいに無くなっちまったんだ、やっぱり仕事の帰りに、いや、あれは休みの日の散歩の帰りだったかもしれない、そのホテルの中のものが撤去されている場面にたまたま出くわしたんだよね、そこから数ヶ月もしないうちに更地になってた、俺はいまでもそのあたりを歩くとき、時々立ち止まってホテルのことを思い出すのさ、そんなときには必ず、あの痩せぎすのメイドコスの女が亡霊のように俺のことを追い越していくんだ


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