いんとろだくしょん&アレグロ?/朧月夜
 
とをね」


 ふっとしたことでわたしは彼女に話しかけました。小さな喫茶店だったんです。わたしと彼女とは向かいあわせでした。他にすわる席がなかったんです。わたしは店のボーイから、彼女の席にすわってくれるように頼まれました。わたしはどきりとしたんです。でも仕方がないな、という顔をしました。彼女はわざと怒ったようにわたしを見ないで急いでノートのうえに記号を走らせたようでした。わたしも彼女の心を見ないふりをしました。
 それが、わたしがきっかり二度目にその店を訪れた時でした。彼女は、わたしがはじめてこの店に来たときも、二度目のその時も、偶然そこに居合わせたことになります。そして、わたしは一度しか
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