鏡の中の鏡――アルヴォ・ペルトに寄せて/積 緋露雪00
 
ば、そのものは時間に喰はれ
高速回転する陥穽に嵌まり込むしかないのだ。
それを免れるのには
アルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」のやうな
反復に現れるほんの少しの差異の気付きにこそ
その鍵が隠されてゐるのかもしれぬ。

「鏡の中の鏡」は美しすぎる故に
寸時も聴き逃してはならぬ。
この見事な反復に隠された毛むくじゃらの時間は
対峙するものの隙を窺っては
いつ喰らふかを算段してゐる。
毛むくじゃらの時間が殺気を見せたときに
対峙するものは一刺しで
毛むくじゃらの時間を仕留めねばならぬ。
それが美といふものだ。

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