花が咲くまで/◇レキ
ちょっと前まで風船は鉄球だった
少女はそれを引きずって暮らしていた
今は風船は空気で満ちて
陽射しを浴びるだけで割れそうなくらい
薄い皮膜はつるりとしている
軽く紐を手に絡ませて歩けば
そよそよと風船は浮いてついてくる
もう微かになった傷跡のように
あとあるのは雑然とした街
生きる目的の代替物のような欲望やエゴ
人々の中で生きていくための建前のような優しさや配慮
どちらも不完全なまま少女は街を歩き始めた
よそいきの真っ赤に白い袖のスカートで
風船を手に持って
※
風船はとうの昔に割れてしまった。
でも風船の中に入っていた小さな種と
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