のらねこ物語 其の二十八「赤提灯」/リリー
 
を足元にひっかけ盃を手にする
 雑穀問屋の柴のハチ
 「元気にしてたのかい?」
 「ああ、元気だぜ。あれからタマには会ったのかい?」
 「おう、一度だけな。米問屋の若旦那に連れられてよ、屋敷に来たぜ。
  すっかり豪商屋敷のお姫様よ。」
 「そうかい。そいつは良かった。」
 ちょっと寂しそうなトラである

 「じゃあな。俺は先に行くぜ。」
 横にいたイワシが立ち去ろうとすると
 「お、そっちの旦那は、お前の連れかい?」
 イワシを見るハチ
 「ああ、そうだ。」
 「あんた、もしかして。あんたが、“空風のイワシ“…じゃないのかい?」
 ハチの言葉に 肩越しで振り向くイワ
[次のページ]
戻る   Point(4)