のらねこ物語 其の二十六「御神籤」/リリー
 
 「ね、おりん。ね…、ねえ、もう寝たの?」

 布団の中で おゆうが
 壁の方へ顔を向けて寝ているおりんへ
 呼びかけてきた
 「起きてるわよ。」

 「ねえ、いいの?…静さんにさ、何も云わないままで。…。」
 頭を動かすことのない おりんは
 黙っていたが振り返らずに言った
 「いいのよ。」

 翌日、深川神明宮の境内には
 社務所の前に お昼間の仕事を済ませたおりんが居た
 その手に握られている 
 宮司さんから受け取った十九番の御神籤
 「小吉、かぁ…。待ち人来ず、便りあり、か。」
 
 呟いて見つめていた御神籤 
 また元のように畳み懐中に蔵うと店へ戻
[次のページ]
戻る   Point(3)