のらねこ物語 其の二十ニ「お煙草入」/リリー
う。」
銭百文ほど、彦二に手渡したんだとよ。その泥棒が、うっかり
こいつをよ、忘れて行ったらしいんだ。
中村主水は、わりと個性的な布製の提げ煙草入れを加代に見せた
「どうしても、返してやって欲しいって、彦二夫婦に頭下げられてよお…。
そんなの、俺があずかったって、泥棒が番屋に顔出すわけねえだろ!」
「へえ!それにしても、この玉飾り見てよ!いい煙草入れねえ。」
「どうせ、盗んだ物に違いねえ。」
すると そこへ通りがかり足を止め 近寄って来た
粋な小袖に羽織りを引っ掛ける中年の男
主水の手にする煙草入れをマジマジ眺め 声を上げたのだ
「あ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)