のらねこ物語 其の二十「木彫りの虎」(一)/リリー
る突き刺さる様な口調
「中村さん!あなた、こんな所で何してるんですか?
早く持ち場へ戻りなさい。そんなことだから、あなたいつも
昼行燈なんて、皆んなから言われるんですよ!」
「田中様、申し訳ございません。いえ、近江屋と掛け軸の話を
しておりましてですね…。」
「例の掛け軸の事ですか?そんなの、この不景気で町の人が
何か面白い事求めて冗談言ってるに決まってます!
行きますよ。」
「はい。」
気まずそうに何度も頭を下げていた中村主水
「じゃあな、近江屋。」
筆頭同心の田中の後を小走りで追いかけて行った
近江屋の店内には畳の間に腰掛け
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