のらねこ物語 其の十六「金魚の掛け軸」(一)/リリー
 
して溶いた
 ガラス鉢の水に 
 今にも泳ぎだしそうな金魚

 そして 翌朝のこと
 まだ外は真っ暗
 おりんは かまどの火の色を見ていた

 「ねえ…死んじゃったね。」
 「うん。」
 後から起きて来た おゆうが両手に持つ
 小さな洗い桶には身を横たえて浮かぶ
 おりんの金魚

 おゆうは言った
 「後でさ…、一緒に庭に埋めようね。」
 「うん。」
 おりんは かまどの火から目を離さなかった。
 
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