のらねこ物語 其の十三「金魚玉」(二)/リリー
んでも、ちょいと珍しい金魚玉らしいんだよ。
「番頭になりゃ、あんた清介だね。きっとね、あんたの前に
道が開けるよ。」
鼻緒の直った下駄に足を入れる蔦吉は
「あっ、あの猫、またメザシ咥えて逃げてるよ!」
お堀の柳の幹の蔭に隠れるトラ
辰巳芸者の蔦吉姉さんと並んで眺める清吉は
この時、初めてトラを見た
「あの茶トラ猫に、この間煮干しやって頭撫でようとしたら
手の甲引っ掻いて逃げやがった。
甘えん坊みたいな顔してるのに、人に慣れてないね。」
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