わが性典/中田満帆
 
まだ無名のおれ
 切り取られた街区でだれの恋人でもないおれ
 対話の機会を見失った40まぢかの男のおれでしかない
 あらゆる呼び名、そのどれとも関係のないおれでしかない
 それでもポルノとエロチカを求めて探りつづけるおれ
 おもいでとはもう和解できない
 ひるがえる地平の彼方でおれはたったひとりのオナニストで、
 自身のエロトピアを探求する疎外者でしかない
 燃えあがる旅客機、繰り返される爆発で
 飛び散ったはずの過去というパズルを
 拡大しつづけよう、
 夢のなかまでも。


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