なまえ (overwriting)/中田満帆
あたらしい夢のなかで眼醒めることができたなら
もうきみのことを懐いださなくともいられるかも知れない
でも、ひとのない13番地に立つたびにきみを懐いだす
いままで読んで来た悪党たちのなまえを算えるたび
じぶんのなまえがわからなくなる
どうしたものかきみとは
まともに話すこともできなかった
それまでの経験がまるでうそでしかなかったかのようにきみに牙を剥き、
そしてそれまであったほんのわずかな望みさえ手放してしまったんだから
もはやもどり道のないところできみのなまえに疼きつづける、
きみのことばに疼きつづける、
きみがきみだけがほんとうの疵痕
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