のらねこ物語 其の七「裏長屋」(一)/リリー
ら、お礼にくれた。
「お礼に…なるのか?コレ。」
「ああ、爺さんが言うには何でも珍しい忘れ草という花らしいんだ。」
これを普段見ていますとね、
苦労を忘れ
夏には暑さを忘れ
冬には寒さを忘れ
年をとっても年を忘れます。
「それは、ふしぎな。花咲くのが楽しみだなぁ。」
浪人の友だちは、その話に笑いながら
さっきから目を覚まし頭おこして辺り見廻すイワシを
そっと 両手伸ばし抱き寄せた。
注)「へっつい」とは薪で煮炊きをする、かまどの事。
熾(おき)とは、薪の燃え残りが炭状になったもの。
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