おれたちは雑貨にすぎない/長束静樹
 
おれたちを殺してくるものすべてをこの手で排除するなら
おれたちにいったい何がのこるというのだろう
シールのはげた醤油差し
ドラグストアに並ぶシャンプーの群れ
大根の花
そういうものにおれたちはすぎないというのに
良くても西荻窪とかで三千円で満足に飲み食いできるような
居酒屋で二人で一万を使い
幸福になるおれたち
どこか外国の穴ぐらに横たわる人々が重ガス爆弾で
フリー素材のように殲滅されたとしても
おれたちはおれたちの穴ぐらの前で
互いの肩をたたきつつ
陳列されるのを待っている
そういうものに
おれたちはすぎないというのに

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