A/wa /あらい
 
観客が立ち上がると
わたしは魚になりそこねて
また化粧室の蛍のよう浅い渚の飴玉、
ハミングしたんだ、追いかけるように

誰かのかわりになって
担って、産まれていった
無音のクラッカーは香りない
ショートした線香花火をよぶ、

わたしの影は どこにでもあるようで
見つからない呼吸のそこ。かしこ、
確かに 弾けて混ざる。
オールを手放してから また溺れるよう泥む、

なにか辿るように 
佇んで 足音を携え、
この耳に酸(ス)がるよう
遠景に潜り込んだ


……破船〈さなとりうむ、〉


風がある、ただ気にもならない
多分、
おおよその{ルビ琴殼
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