まどろみ/レタス
 
暗く深いトンネルを抜けると
其処は石化した暗い時計の森だった

文字盤の針はみな狂っていて
ぼくの足音だけがサクリ サクリ…と空に消えていく

遠くから
ギリッ ギリッ… とネジを締めるような音が聴こえてきた
足音をなるべく静かに近づいて行くと
其処にはミズナラの巨木時計がそそり立っていた
その根元に扉が開いていて
中で何かがうごめいている
ぼくは歩みを止めず開いた扉をコツコツとノックした

出てきたのは髭をたくわえた紳士だった
多分彼は時計技師だろうと思った
彼は無言でポケットからブライヤーパイプを取り出すと
紫煙をポカリとくゆらせて
「君は何処からやって来た
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