音楽と精霊たち?/朧月夜
まま、と決めつけてしまうのは早計だろう。葉子は自分なりの努力をしながら生きてきたし、その人生は葛藤と苦労の連続だった。大学の講師という仕事もすんなりと得たものではない。人一倍の努力をしてやっと勝ち取った仕事だった。
それだからこそ、同僚たちは葉子を引き留める。
「他にこんな良い職場ってないよ?」
「今までのキャリアを無駄にする気か?」
「そもそも田舎に仕事ってあるの?」
同僚の誰もがそんなことを言った。たしかに、地方都市にある仕事は少ないだろう。良くて小学校や中学校の音楽教師、悪ければピアノ教室の先生くらいだ。そんなことは誰に言われなくても分かっている。ただ、両親
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