Lの昇天?/朧月夜
したいと考える、それくらいの知識はLも持っていた。
しかし、今のLの気持ちはそれとは違っているようだった。
(死は必然だ)
という考えが、何度も頭のなかで木霊する。
30歳という年齢は寿命と言うにはあまりにも若い。母の後追い自殺をしたいわけでもない、父との間がそれほど不仲だというわけでもない。どれも、今死ぬのにふさわしい理由ではなかった。
(なんとなく死んでも良いんじゃないか)
と、Lはふと思う。パウロ・コエーリョの小説でも、主人公が死のうとしたのは「なんとなく」という理由だった。それなら、わたしがなんとなく死んでも良い、という十分な理由になる。たとえ病
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