Lの昇天?/朧月夜
 
警察官の腹を蹴った。

「お、お前!」

 と言って、警察官はLに掴みかかってきた。それから取り押さえられるまではあっという間の出来事だった。Lの頭には、その時の様子が今でもスローモーションのように蘇る。さすが手練れと言う他はないが、Lは後ろ手を掴まれ、そのまま腕を背中に回され、階段に体を押し付けられた。巡査が応援を呼ぶのを、Lはどこか冷めた気持ちで聞いていた。

「お前、いい加減にしろよ、なあ! いい加減にしろよ! ……ええ、そうです」

 警察官が電話に向かって話したり、Lに向かって恫喝するのを、どこか遠くで見た光景のように、自分が今体験している行為ではないかのように、Lは感じ
[次のページ]
戻る   Point(2)