アテナイの学堂 〜Whitney Houstonに/カワグチタケシ
オープンキッチンの頭上に掲げられた
黒板に描かれた今日のメニューを端から読み上げ
アテナイの学堂の壁画を見上げて
床に降ろされたシャンデリアの
埃にまみれたキャンドル型の
電球が七色に輝いた時の
記憶を辿る
窓から石畳の広場に椅子を投げ
砕け散る決心
夢のはじまり
舞台下の奈落の円卓に並ぶ
アンティークの食器たち
夢の終わりに
真昼みたいな朝
半分透き通った身体は
半分透き通った精神を育む
ちょうどよさは瞬間の幻影
足りない者は増やしたがり
多過ぎる者は減らしたがる
旅の話を聞かせて
うまい話には裏がある
ひとりだけ騙されなかった男が
憧れを胸に抱いて
朝の海に漕ぎ出す
遠い目で見送りながら
純白のトーガをまとった女が歌う
世界がその歌を聞き逃すことはなかった
世界はその声を聞き流すことができなかった
人は生きている限り出会い続ける
それはそれとして存在し
空をほどいて
雲をほどいて
裸足で眠れ
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