眠るジプシー女 〜Linda Ronstadtに/カワグチタケシ
朝が昼になる瞬間に
日向と日陰の境目で生まれた私は
市街地と砂漠のきわで育った
砂漠ではたくさんの流れ星を見ることができる
気をつけて
と言われて
気をつける子どもはいない
夜に裸足で砂漠を歩いていたら
貝殻の鋭利な先端で土踏まずを切った
海からは何万マイルも離れているのに
誰かが捨てた牡蠣殻は
私の土踏まずを薄く裂いた
砂漠で蠍に刺されるより痛くはなかったが
細い傷口から血が止まらなかった
家に帰って私は
傷口を洗った
砂漠の砂は清潔だった
きっと、
という言葉の切実な響きが好きだとあなたは言った
きっと、
にはときどき、
いつか、
がつい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)