年の瀬/
夏井椋也
終えて
始めることを
止めた
当り前に
巡ることを
諦めた
透き通った人達の
声が届かないように
ひたすら囀った
正しすぎる風に
猫背を向けて
なけなしの炎を護ろうとした
消え入りそうな道の先から
また せせらぎの音が聞こえる
終えて始めるための音だ
もはや向こう岸に道はない
それでも
裁かれない罪をしっかり抱えて
時の浅瀬を渡って往く
足元の小さな花を摘んで
暮らしの窓辺に飾り続ける
もう道は探さない
辿り着く場所は解っているから
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