夏の幻/ミナト 螢
 
水平線の向こうに
会いたい人がいる

思い出の中で
着替えをしながら

朝には朝の輪郭で
見つめ合ったりした

鏡のような世界に
生まれてしまったから
映るものは全部
愛しておきたい

夜には夜の爪痕で
空を剥がして
食べに行くの

砂浜に落ちてる貝殻で
君と話せたら
電話なんていらない

声が聞きたくて
何度も呼んだ名前を
海はいつしか覚えて
波の間を泳いでいく

もう会えないと分かってても
君のことを考えて
痛くなりたいから

貝殻で切った
薬指の赤い血を
海で洗い流す時

君と僕を繋ぐ
運命みたいに見えた
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