午睡/レタス
あまりにも静かだ
軽い欠伸をし
目蓋を開けると
まゆの中に横たわっている
それは刹那に消えた
暖かい
そよ風が柳を揺らし
水面には睡蓮が浮かんでいた
ウスバカゲロウが無数にふわふわと舞い
それを狙った鱒が時おり跳ねる
池の向こうに東屋があり
ぼくは誘われるように歩きはじめた
予感が胸もとに走る
そこにはKが池を眺めていた
足音に気付いたのか視線が交差する
ぼくたちは以前の蘇護(そご)を忘れ
互いの視線は柔らかくなった
そして名前を呼びあう
Kの長い黒髪が風に揺れ
ぼくは彼女を抱きしめ泣いた
此処は何時もと変わらない部屋
やがて余韻は無くなり
ふらふらと立ちあがる
ポットで湯を沸かしてアールグレイを啜った
遠い想い出は絵画のようだ
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