黄金/ただのみきや
 
十二月 早朝
いつものように高台通りを歩いて仕事に向かう
右手の歩道と山側の住宅地の間はなだらかに傾斜して
自然の植生を活かした広い公園になっている
この季節には通りに面した落葉松(からまつ)が一斉に散って
朝の路を黄色く染めていることがある
人気のない時間にそれを踏むのはさながら絵手紙の中を歩くよう
去りまた来たる見えざるものたち
古き友らの無言の挨拶を受けとったかのようでなにやら心地よい
それが降り始めの淡雪と重なったり
濃い霧の中で霜を帯びていたりするとまた違う趣があって
足を止めては景色を吸い
空気を全身でかみしめてみる
春の桜の花びらが敷きつめられた道や
[次のページ]
戻る   Point(5)