祝福の鐘/由木名緒美
君の荒らい息が赤い林檎を温める
夢は剥き出しの牙で己が身を焼き尽くす
掴もうとした蜃気楼が君を倒転させるんだ
君の壊した桃源郷で
亡霊共の哄笑を葬り去れ
セラミックに偽装されたスプーンを曲げて
歌い上げるんだ
神を讃える賛美歌を
穢れなく澱みない
山岳の頂きに湧き出る清水は
大都市を貫き大海原へと還る
故郷を想え
摩天楼に聳える岩盤の浮き草か
大地に穿つ萌芽の尺寸の柔さか
君は跪くだろう
魂に刻印された名の音韻に
美しく咲き誇る
香り立つ夢幻の原野で
何一つ失ってなどいない
君を待ち侘びる花々の微笑みが捧ぐ
前人未到の途に鳴り響く祝福の鐘が
栄光の明日へと続く復古の時を告げている
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