きみのいない午後/タオル
きみのいない午後は
あたたかいけど うつろで
コーヒーの湯気が のろのろ移ろうのを
ぼんやりと 眺めている
こんな感じ 音もなく葉陰が揺らぎ
窓枠に
淡い緑が染みこんでゆく
目のまえの無人のいす
ふいに飛びこんでくるきみがいた一瞬
なつかしいしゃしんの中で
わたしたちは真冬の小籠包をわけあっている
その湯気はまるで月光のように蒼白く
だからとても遠いできごとなのだそうだ
立ち上がって鏡を覗いても
永遠に映らないきみのため
コーヒーの湯気は
わたしの頬を少し なでる
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