銀河通信/朝雪
 
北斗七星が傾いて 絵葉書をこぼす
ひらりと指でうけとめる なつかしい君のことば
仙女の写真にうすく 桃の果汁の染み
あいかわらずの筆跡に 白い歯を思いだす

君よりずいぶん遅くに 僕は生まれてしまった
太陽と月のめぐりに ぐずぐず乗り遅れた
ずっととおい場所で 星のように瞬く
君のひかりを追うことが 今生の僕の旅

ねえ また呼んでよ
リゲルをつついて フリスビーを投げようって
ねえ また呼んでよ
フォーマルハウトの綿菓子屋は きっと今年もやってるよ

シチリアのれもんをかじりながら 返信をシミュレート
おぼえたてのイタリア語で ちょっと口説いたりしてみる
書きつける君の名は 女神のそれと同じだから
宗教画の切手を キスみたいにぺたりと貼る

「アラビアの呪文をかじりながら 中国で修行中」って
いったいこの葉書に どんな返事を書いたものか
ところでこの仙女の名を 君は知ってるのかな
僕と同じなんだよ おたがいガラじゃないね

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