M街のカフェで/番田
かの車が、通りを行き交っていた。カフェには二階のスペースもあって、その奥には喫煙スペースがもうけられていた。だから、そこでコーヒーを飲んでいると、出入りする人が多くいた。通りには、そのような場所がなかったからだろう。喫煙者にとっては、オアシスのような場所になっていた。私は、そこに入ったことは無かったが、出入りする人は男女年齢問わず、様々だった。私はいつも、テーブルで昔のことを考えていた。苦労をともにした同僚は、今どこで何をしているのだろうかと。私の働いていた目黒の会社に、今は当時いた人は一人もいないようだった。だからその思い出だけが、そこには残っていた。そして、このテーブルに、それは思い出されていた。僕の心の中に、確かに存在していた。
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