果物籠/草野春心
 


  忘れたものだけ
  見ることができた


  床に張った
  埃 夕日の格子型
  蛇口に残る 唇のような水
  言うことができた
  言い尽くしたことだけを


  おくれて きた
  記憶に貌(かお)をかくして
  やさしさがわたしの憂いを
  置いていった 小さな 果物の籠


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