秘めるが花/朝雪
 

黒いスニーカーに 赤い爪を隠して
きみの隣で揺られてる 私鉄 日曜午後八時
窓に映る顔が白くて 目ばかりが大きくて
きみの隣で疲れを見せてる こんな自分がいや

さっき呑んだ梅酒
リトアニアのリキュール
ハーブの効いたサカナ
レモン味のじゃがいも
妙な話ですが 只今現在きみと
胃の中身が同じってこと
わけもなくうれしいのです

会話は途切れたままでも いたたまれないってこともなく
やがてきみは降りていき あたしは深く座りなおす

黒いスニーカーの中 赤い爪があると
きみは知らないままで 家路を辿ってくけど
みるみる顔に血がのぼる 見送った途端 染まりだす
きみが来るって知ってたら むしろ赤にはしなかった

さっき交わしたトリビア
深い声のジョーク
メールの後日談や
二年後の春の約束
妙な話ですが 只今現在「片恋」。
真紅のペディキュア同様 秘めるが花 と ひとりごち
わけもなく靴紐を結びなおすのです 私鉄 日曜宵の口
 
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