渋柿/夏井椋也
 

追い詰められた枝先で
黙り込んだまま
幾つかの季節を
背中を丸めて受け流した

独り言を蹴飛ばして歩いた冬と
味のない言葉を噛み続けた春と
溶けた爪先で帰ろうとした夏を越えて
束の間の安堵の秋にぶら下がる

他人に作ってもらった
自分らしさも捨てきれずに
振り上げたプライドの杖の
置き所も見つからずに

ゆうらりと熟れていくふりをしながら
薄れない灰汁は内側を巡る

許すことと諦めることの
区別もつかないまま



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