渋柿/
夏井椋也
追い詰められた枝先で
黙り込んだまま
幾つかの季節を
背中を丸めて受け流した
独り言を蹴飛ばして歩いた冬と
味のない言葉を噛み続けた春と
溶けた爪先で帰ろうとした夏を越えて
束の間の安堵の秋にぶら下がる
他人に作ってもらった
自分らしさも捨てきれずに
振り上げたプライドの杖の
置き所も見つからずに
ゆうらりと熟れていくふりをしながら
薄れない灰汁は内側を巡る
許すことと諦めることの
区別もつかないまま
戻る
編
削
Point
(8)